柿の花が咲いた
信州の実家には、家の周囲に何本か柿の木が植えてありました。富有、蜂屋、次郎のほか、名称は知りませんが2種類、何本あったか指を折って数えてみましたが、多分10本以上だったと思います。多くは甘柿で、実る頃には何よりのおやつでした。柿の木によじ登って、そこで皮もむかず洗いもせず、丸かじりしたこともありました。我が家だけではなく、大概の家には柿の木が植えられていて、それが巨木という家が多いように思いました。我が家でも、一本だけは遠くからでも直ぐ見える一抱えもある巨木でした。

家から離れた畑にも柿の木がありました。これは小型の渋柿で、収穫時になると、高く迄伸びた太い巨木ですので、長い竹竿を振るってたたき落としていました。その渋柿は、家中総動員で小山に積み上げて、柿の皮をむいて糸に絡め留めて、日当たりのよい南側の縁側の処に釣り下げて天日干し。糸や縄で釣り下げられないのは、竹ひごにさ差してて干していました。やがて乾し上がると、木箱に藁を挟んで積み重ね、冬までのお楽しみ。甘みの乏しい時代でしたから、何よりの甘みでした。柿の木は生活にしっかり溶け込んだ大事な存在だったと言えましょう。干し柿は今でも故郷の特産品です。

今の我が家には柿の木は一本もありません。植えたくても狭い敷地には植えるような余地がないのです。垣根を挟んだ隣家には柿の木があるので、柿の木は今もごく見慣れた存在です。近くの道を歩くと、柿の木を植えた家があちこちにあります。市外まで足を伸ばすと、柿畑があって、出荷しているようです。
                                     さて、先月のことですが、柿の木について、私は大発見をしたような気がしました。それは柿の木に花が咲いていたのです。はじめは花とは思いも付かず、柿の葉の浅緑の中に、薄黄色かむしろ白に近いような物が所々に着いています。カメラをズームアップして見ると、どうやら花のようです。実がなるのですから花が咲くのは当たり前ですが、これまで柿の花を見たことがありませんでした。花といっても、花の形態も様々でしょうが、これは立派に花弁をそなえ、柱頭らしいところもあります。私の勘違いかと思って百科事典を開くと、柿の花には雄花と雌花があるなどと記しています。間違いなく柿の花でした。早速カメラを向けましたが、私のカメラではピンぼけしか取れません。その後、近くの家の柿の木をのぞいては花を探しましたがなかなか見かけません。品種によって咲く時期が違うのだろうと、柿の木を見かける度に、眺めていましたが、一カ月ほど経ってやっと見かけました。私には大発見でした。間近によって写真を撮ってみました。花弁をそなえた立派な花です。

これまでどうして見たことがなかったのか不思議です。私がそれだけ注意散漫だったのか、実の方にばかり気をとられて、花の咲く時期には柿の木に眼も向けなかったのでしょう。兎に角、1糎に満たない小さな花ですから、高い柿の木を見上げていても気づくはずはありません。それに地味な色合いの花ですから、葉の色の影に沈んでしまっていたのでしょう。

柿の花は品種によって、大きさや色など、様々な違いがあるようです。何より開花の時期が一カ月も開きがあるのですから、注意してみていないと見落としてしまいます。興味がありましたら、是非御覧になってください。

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