今も手拭いをお使いですか
今も手拭いをお使いになっていますか? お宅に手拭いがありますか? いやいや「手拭い」ってご存じですか? 多分若い人の中には見たこともないとか、知らないという人もおるのでしょうね。 「手拭き」ではなく、「手拭い」です。

「手拭い」この言葉も手拭いも長らく忘れていました。それを突然の様に、つい先日、急に思い出したのは、髪の毛のことからです。だいぶ残り少なくなってきた髪の毛ですが、短く切り詰めていないので、前髪が顔に垂れてくることがあります。一応、整髪料で固定しているのですが、掻き上げたりするとその効き目もないようで、顔の前に垂れてきてうるさくなります。
そんな時、部屋の中で帽子はないが、手拭いならと思い出したのです。子どもの頃、父親などが手拭いで頭で縛っていたことを。髪の毛を押さえるためではなく、日差し避けの帽子のような役目だったのでしょう。それを思い出して、早速真似をして、今のこの時もしばっています。とても快適です。蕎麦屋の亭主にありそうな姿です。

子どもの頃の手拭いの使い道を、あれこれと思い出してみました。寒い頃には頭にかぶせて、顎の下でねじ込む「頬かぶり」。私の郷里では「ほっかぶり」と言っていました。手拭いですから、手拭きや汗拭きは主な役目で、野良仕事には必ず腰に挟み込むのが普通だったようです。また、高校生の時には、腰から長く垂らすのがファッションでもありました。女性は髪の毛を守り、日差しを防ぐために「姉さんかぶり」で頭の後ろで留めていました。多分、汗が出たときは外して拭いたのでしょう。手拭いは剣道の防具の面をかぶるとき、汗止めの必需品だったことも思い出しました。怪我をしたら、端から切り裂いて包帯になるし、瓶や小物の包みにもなる、今はタオルでしょうが。時代劇などには、様々な使い方が登場します。泥棒は眼だけ出すように鼻の下で結ぶ盗人縛り、魚屋のあんちゃんは、威勢よくねじり鉢巻(向こう鉢巻)、新内流しは折り畳んで頭の上へ、夜鷹は……。

ないだろうと思ったが念のため探して貰うと、タンスの底から4本出てきました。何年か前までは手拭いはお得意様への暮れや年賀の粗品は手拭いが定番だったようです。今私の頭には「**商店」の文字が見えます。以前は旅館で出されるのも手拭いだったのでしょうが、いつの間にタオルが取って代わりました。手元の一本「**温泉」の手拭いがありました。無いと思っている家でも探せばあるいは出てくるかもしれません。
                                 タオルが日本に上陸したのは、明治初期で、長さも今日の2倍ぐらいで、主にマフララーとして使われたそうです。タオルは手拭いより吸水性も保水性も優れていますし、保温性も手拭いより高いでしょう。そんなことで、いつの間にか手拭いに代わってタオルが生活に溶け込んだのでしょう。それ以降、手拭いごく一部を除いて姿を消してしまったと思ったら、思いも寄らぬところでもてはやされているそうです。手拭いは呉服屋あたりでしか買えないと思ったら、通販でも買えるし、驚いたことに100円ショップでも買える? 早速100円ショップへ行ってみたらありました。20種ぐらいの色鮮やかな手拭いが並んでいました。そしてそれぞれに説明書が付いています。「巾着袋の作り方」「弁当箱包み」など。また、テッシュボックスカバー、ランチマット、ブックカバーなどにも使えるとあります。わずか100円とあって小物作りの手軽な素材として人気があるようです。

買ってみたはいいが、さて、三本の手拭いをどうしようか思案中です。

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