野菊を探しながら
この数日、なんとなく体調が悪く、別に寝る程のことではないのですが、外出する意欲もなくて家に閉じこもりの有様です。本を開くでもなし野菜の手入れをするのでもなし、テレビが映し出す映像を見るともなしに眺めて時間を潰す……、なんとも不健康な生活です。窓から見下ろす隣家の畑に、収穫もしない柿が青空に浮かんでいる景色を眺めていて、ちょっと歩いてみようかと気が動き、近くの道を歩いてみました。桜並木の桜は、葉の半分程落ちて路上に散らばっています。すっかり落ちてしまうのも間もないのでしょう。通り掛がかりの家の庭先には、色鮮やかな何色かの菊が咲き乱れています。お寺の大きなイチョウはまだ色づかず、地面の黄色の絨毯にはちょっと間がありそうです。

畑道に出ると、道路脇の畑で豌豆の支柱を立てている老夫婦に出会いました。「これだけ作っていると、さぞかし沢山収穫できるのでしょうね。」となんと陳腐な質問に、「所帯が大きいので何のことはないよ。」とおばあさん。毎年同じ場所で栽培しているそうですが、豌豆って連作障害はなかったかな? と気になりましたが、ベテランにそんな口をきいては失礼かなと思って黙っていました。ここは直播きのようで、しっかりと育っています。ポットで育苗中の私の豌豆も明日にでも植え付けなくては。

ススキの穂が夕日にキラキラと輝いています。蒲の穂綿が地面に散乱しています。やがて風で吹き飛ばされるのでしょう。アキノキリンソウや名前の知らない小さな花も見かかけます。畑の片隅にはもう時期も終わりかけたのか、コスモスが倒れかかっていました。秋の終わりを告げているのでしょうか。やがて草叢の中に紫色の小さな花に出会いました。これって野菊? 野菊には間違いないと思うのですが、探している野菊かどうか?

石森延男さん作詞の「野菊」という歌があります。小学校の教材にあって、私も歌いました。晩秋の頃になると、自然とこの歌が口を継いで出てきます。野菊? 広辞苑には野に咲く菊、ノコンギク、ノジギクなど。ヨメナの別称。とあります。野に咲く菊とはわかりやすいけれど、具体的に3種の名が揚げられています。私が見かけた花は野菊だけれど、石森さんの野菊は薄紫で、群れて咲くというのでは別物です。もうすこし先に行くと、ノコンギクらしい花に出会いました。帰宅後、写真と図鑑を見比べてみましたが、これも石森さんが見た野菊とはちょっと違うようです。群れては咲いていません。気高く清く匂う花とは思えません。「きれいで・やさしく・気高く清く・匂う・明るい」花だと感じたのは、感性の問題で、凡人には悲しいかなそうとは思えませんでした。

まだ、「こ寒い風」は吹いては来ないけれど、そう先ではないでしょう。既に初冠雪を迎えたという赤城や日光連山は、薄曇りの中。やがて赤城颪が吹き抜ける頃には姿を見せてくれます。そう思っただけでも、なんだか急に寒くなった気がします。向寒のみぎりです。どなた様もどうかご自愛くださいますよう。

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