鬼怒・小貝川の下流で江戸時代へ

 なかなか梅雨明けにならないなか、この日は真夏のような晴天になるというので、ちょっと出かけてみることにした。行き先は、鬼怒川と小貝川が間もなく利根川に流れ込むあたりに位置する、常総市(旧水海道市と石下町)とつくばみらい市(旧伊奈町と谷和原村)へ、江戸時代を探るために出かけた。

 常総市では、国指定重要文化財「坂野家」で江戸中期の豪農の家、日本三天神の一つ大生郷天満宮、厄除元三大師の安楽寺、千姫の菩提寺弘教寺、怪談「真景累ケ淵」の累ゆかりの法蔵寺を訪ねた。
 鬼怒川、小貝川を渡り、関東鉄道常総線、常磐自動車道、つくばエクスプレスをかいくぐって行ったつくばみらい市では、歴史公園の「ワープステーション江戸」と間宮林蔵の生家を訪ねた。


豪農の屋敷 坂野家住宅


水海道風土博物館「坂野家住宅」は、鬼怒川と旧飯沼に挟まれた1ヘクタールに及ぶ広大な台地全面を敷地としする豪農の住宅。昭和8年の記録では、米が小作米ともで1300俵、小麦600俵もあったという。江戸時代中期の飯沼新田開発で「財政的にも飛躍的に拡大し、今の屋敷の原形はおおむねこの時期に形作られた。」という。

平成10年に寄贈を受けて市所有となり、その後周辺の里山風景の復元・整備事業を進め、更に、主屋の老朽化が著しいため、平成15年1月から国・県の補助を受けて主屋の保存修理工事が行われ、坂野家が最も栄えた江戸時代後期の姿へと復元された。と説明を受けた。

一般は300円の入館料が65歳以上は無料。係の方が、一部屋一部屋と案内して説明してくれる。
広い土間は三和土で、竈と地炉、また馬屋や風呂もあった。見上げると、太い梁が架けられていて、ここだけでも豪農の家の姿がわかる。

土間から囲炉裏のある茶の間・納戸や広間に上がると、前面の柱間三間に蔀戸が吊られ、その上は欄間になっている。この蔀戸と欄間はこの地方では他に例がないそうだ。蔀戸は寝殿造りの建物に見られるもので、絵か映像で見たことはあるが、実物は初めて見た。

「19世紀中頃増築された座敷は、南から「一の間」「二の間」「三の間」と呼ばれ、「一の間」には床・棚があり、「二の間」との境には透彫りの欄間を入れ、長押には釘隠を打つなど、豪農住宅の客室としてよく整っている。」幕府の役人を迎えるための部屋とのこと。

大正時代に建て直された、二階建ての書院があった。カーバイトの照明や昔ながらの電球、木目が年月で浮き出てきた床や柱、主屋とは全く雰囲気が異なり、そこにはまさしく大正時代があった。

丁寧に説明してくれるのに耳を傾けていて、建物の内部をカメラに納めるのを忘れてしまったのが残念。

ここは時代劇の格好のロケ地で、今まで多くの映画やテレビの撮影がされたそうだが、東京にも近く、建物や周辺の里山の景観、近くの寺院など、江戸時代を映し取れるところがあちこちにあるそうだ。


 干拓されて美田となった飯沼の遙か北に、筑波山がちらっと見えた。坂野家住宅はもうすぐだ。 

見事な孟宗竹の小径。右側の斜面の上に住宅がある。そぞろ歩きが似合う小径。

向こうから若侍が二三人声高らかに歩いて来るような表門へ続く坂道。どこかで見たような気がするが、勘違いかな?

表門の国指定重要文化財「薬医門」。本柱の後方に控柱二本建て、切妻屋根を掛けた門で、本来は武家屋敷に設けられる様式だって。

国指定重要文化財「主屋」18世紀前半に建てられた折曲り寄棟造り。正面が土間、左に玄関。

主屋の玄関。武家屋敷のように式台があり、その奥に三つの座敷や仏間・広間などがある。

大正期に建てられた書院「月波楼」の二階からの眺め。紅葉の季節にはさぞかし見事だろうなあ。


表門から坂道を戻り駐車場に向かう坂道の傍に、もう萩の花が咲いていた。

ここで撮影された映画など。
映画『魍魎の匣』  テレビ『西遊記』  映画「HAZAN」  映画「座頭市」  NHK「おらが春」 NHK「赤ちゃんをさがせ!」
NHK「逃亡」  NHK「葵〜徳川三代」  NHK「利家とまつ」  NHK「武蔵」  NHK「蝉しぐれ」  などなど

大生郷天満宮・安楽寺へ

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