カタカナ語の氾濫にお手上げ
毎年実施している文化庁の国語に対する意識調査の結果が過日発表されました。その調査を覗くと、おもしろいことや不思議なことに行き当たります。国語も永久不変ではなく、時代とともに変化して行くものでしょうから、それを押しとどめようとは誰も考えようとはしないでしょうが、その変化の受け止めにズレが生じると、意思疎通の妨げになります。この調査から、そんなズレを幾つも見つけ出すことが出来るのは、「困ったもの」だと思いました。

その一つはカタカナ語の使用です。世の中にはカタカナ語を使うと学があるとか偉いのだと錯覚しているエライ人がいるようで、常々困ったものだと見ていたのですが、その実態が調査でも示しています。

◎日頃,読んだり聞いたりする言葉の中に出てくる外来語や外国語などのカタカナ語の意味が分からずに困ることが,よくあるか,たまにあるか,それとも,ないかを尋ねた。
「よくある」と「たまにはある」と回答した人を合わせた「ある」が78.5%,「困ることはない」は24.4%であった。
◎カタカナ語の使用が多いと感じることがあるかの問では、全ての年代で7割台となっており、世代間で大きな開きがないこと、過去の調査と比較すると、各世代とも10数%低下しており、カタカナ語が時代とともに受けられつつあるように思えます。

でも、8割近い人が困っているのが現実です。分からないのはお前が不勉強だ、時代遅れだと切り捨てられてはたまりません。誰にも通用する日本語を使ってほしいものです。どうしてもそれに代わる日本語がなくてカタカナ語でなければ表現できないというのならカタカナ語の使用も考えられましょう。或いは漱石や鴎外が外来語を新たに造語で置き換えたように、素敵な言葉を考え出すのもいいかもしれません。そんな能力はとてもありませんといわれればそれまでですが。

ちょっと環境白書を覗きました。そこにはカタカナ語がたくさん出てきます。キーパーソン、モニタリング、トレイル、バイナル、オフセット・クレジット……。辞典で調べても出てこない言葉もあります。
自民党の政策集も覗いてみました。プライマリーバランス、イコールフィテング、イノベーショントレーサビリティ……。中にはカタカナ語に括弧して日本語が書いてあります。「サプライチェーン」には(一環流通経路)と添えてあります。「一環流通経路」なら私にも意味が分かります。それをカタカナ語になぜするのでしょうか。

お前等には分からなくてもいいんだといわれれば、なにおか言わんや。でもテレビや新聞も同じ発想であっては困ります。遂にカタカナ語の氾濫に、訴訟でもって立ち上がった人がいました。8月か9月、岐阜県の高齢者がテレビ番組で理解できない外来語が多すぎて精神的苦痛を負ったとして、NHKに慰謝料を払えと訴えたことがありました。「リスク」「ケア」「トラブル」「コンシェルジュ」「アスリート」「コンプライアンス」などの言葉を例示したそうです。「コンシェルジュ」と「コンプライアンス」は私も分かりませんでした。早速辞書をめくってみると、「ホテルの案内係」、「法令遵守」
のことだって。案内係よりコンシェルジュのほうが格が上に聞こえるかなあ。私もこの裁判の原告に加えてほしいものです。

この調査には、カタカナ語だけでなく、いくつかの大項目で注目すべき結果が報告されています。後日取り上げてみたいと思います。

庭先の秋海棠の花が秋雨に濡れています。
  雨ながら朝日まばゆし秋海棠 秋桜子
  雨至り障子を濡らす秋海棠  青邨
  秋雨にそっと光るや秋海棠  九茶
秋海棠には雨が似合うようです。

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