箱根には関所が二つ?
孫の学校が振替休日というので、この程日月曜の両日、孫の家族とともに箱根に行ってきました。箱根は数十年前には仕事で十回以上行った経験がありますし、私的な旅でも数回は行ったことがあるのに、今回箱根に出かけたのは、いつもお決まりのコースで、広い箱根の一部しか訪ねたことはありません。それに、かつて出かけたの時の写真は、もっぱら人物ばかり。何回も行ったのに関所そのものの写真は一枚もありません。是非私の写真集に加えたいことと、いつも地上から見上げたばかりのロープウェーからの眺望も楽しみたいと、二点の希望を伝えて、計画を立てて貰いました。

小田急の箱根フリー切符を送って貰い、新宿からロマンスカーで一路箱根湯本へ。この切符は箱根の小田急系列の交通機関や施設がすべて利用できるという便利なものです。湯元からバスで関所に向かったのですが、慣れ親しんだはずの関所がありません。長い間に、施設も改築や新規な施設の増築もありましょうが、全く記憶の中の関所ではありません。何より、位置関係が違います。不思議に思って、とうとう係員に尋ねました。「箱根の関所は二つあったのですか?」勿論答えはNO。なぜそんなことを尋ねるのかと不思議そうでした。暫くしてやっと気づきました。過去に尋ねたときは、必ず小田原側の江戸口からだったのに、今回は反対の三島側の京口だったのです。恥ずかしいやら情けないやら、とんだ関所でした。

宿は芦ノ湖より徒歩3分という標高754m、芦ノ湖より30m高い位置にありました。泊まった部屋はそれぞれ10畳ほどの洋室と和室の二部屋続きの特別室で、入口は一つですがテレビは2台という、私どもにとっては贅沢な部屋でした。風呂は硫酸塩・炭酸水素塩の熱い湯だというので、残念ながら入浴は断念。いつになったら温泉に入れるのやら。宿の前には広い芝生の斜面が広がっていて、朝のさわやかな空気の中で、バドミントンやハンモックに興じたり、芝生を転がる子どもの姿もありました。

宿の周辺は湖尻園地とかいう自然公園の中に位置するようで、朝の散歩で森林の中の自然探索路を辿ると、花の広場や野鳥の森、つどいの原っぱなど各種の施設が点在しているようです。その森の一部を歩くと、初めて見る樹や草の花を幾つも見ることができました。図鑑を持って来ないのが残念でした。

散歩の途中、初めて聞いたような鳥の声が耳に入りました。特徴のあるその鳴き方は、時鳥だと思います。「ケッチョケキョケキョ」あるいは「テッペンカケタカ」とも聞きました。「時鳥鳴きつるかたをながむればたゞ有明の月ぞ残れる」と詠われたように、鳴きつる方を探しても、鳥の姿も月も見えませんでした。「大楠公」の歌には「鳴いて血を吐く時鳥」とありますが、詩人ではない私にはそこまでは感じませんでした。人生初の時鳥の声はこの旅の収穫の一つです。

仙石原のススキの群落もまだ早すぎるので、誰も停まって眺める人はいません。そこから脇道に入って、湿性花園という施設を訪ねました。ここは広い園内に湿原の植物を中心に、生育地別の幾つものコーナーがあり、各種の植物を眺めることができました。一巡したつもりでしたが、足を運ばなかったところもあり、2時間ぐらいかけないと全体は見尽くしません。                
最後に強羅からケーブルカーで大涌谷へ登りました。大涌谷は何回も尋ねたところですが、全く過去の記憶の風景とは違って、馬酔木などの樹木も全くなく、山の斜面に転がる岩石の合間から吹き出す噴気が見えます。立ち入り規制は解かれてはいますが、ケーブルに乗るとき、一人一人に「メディカルシート」を手渡されます。それは火山性ガスの事故防止のため「気になる方」は口や鼻を覆うための袋入りのウェットティッシュです。この日は幸いにこのティッシュを使っている人は一人も見かけませんでした。安全宣言は出てはいますが、ここは地獄谷、いつ何が起こるか誰も分かりませんが、どなたもゆっくりと御見物。こちらは名物の黒たまごも食べずに早々に大涌谷から早雲山へ下ります。あれ、「谷」が「山」より高いとは? これは駅名だけのお話です。更に強羅へ逆戻り。そこから「あじさい電車」とやらの登山電車で湯元まで。

この旅で更に見聞を広めることができましたが、何より初めての三世代の旅の味は格別でした。すべてお任せでしたからのんびりと楽ちんの旅ができました。機会があったら、またこんな旅をしたいものです。

つたない旅のアルバムです。

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