伊豆大島の旅 波浮港文学散歩
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渡し船 傘を立てたる人のせて 波浮の入江にけぶる春雨 与謝野鉄幹 |
提灯借りて来し渡し場に浪さわぐ 星影灯影さんざめく唄の港なり …… 萩原井泉水 |
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波浮は少しく湾形をなせるところ 峭壁三方をめぐり紺碧一漲を湛える 幸田露伴 |
春の水 おぞくも狂う 入り江かな 巌谷小波 |
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眼をとぢたり 瞼ひらけば 火となりて 涙吾れば 焼く憶いなり 林芙美子 |
山めぐり 波浮の入り江の青めるに 影しぬ船と 片側の町 与謝野鉄幹 |
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春漁港 アワビ水貝 中のエビ 大口の魚拓黒々 春日暮る 藤森成吉 |
ただ一つ 見えて悲しき 朝船は 野増の磯に 寄らで過ぎ行く 土田耕平 |
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くろしおや 松魚に勢ふ 八挺櫓 巌谷小波 |
昨日より波浮の港にとどまれば 東北風吹けども鶯ぞ鳴く 与謝野晶子 |
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島の乙女は今日もまた 波浮の港の波の上 白百合の花が咲いて夏の真昼に……野口雨情 |
大島に 蠅と牛糞なかりせば 不寒不熱の極楽の里 井上円了 |
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大島の波浮の桜の花白く 松にまじれば山梨に似る 与謝野晶子 |
蛙鳴かぬ島にし住めばこの頃の そぼ振る雨夜ふるさとを思う 土田耕平 |
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さくら散る山裾道の夕ぐれを 牛曳きて来る 少女子あはれ 土田耕平 |
椿の生い茂る「椿ロード」 この道路に添ってまだいくつかの文学碑が建てられているそいうだ。 | ||
眼にしなかった碑は以下の他にいくつもある。 髪は背の丈 油は椿ョ いとしアンコはサァ 島育ちョ…… 北原白秋 都をば八重の潮路に離れ来て 冬なき島に 冬籠する 大町桂月 高波の中にあらはる朱のへさき 退避の船のまたひとつ来つ 木俣 修 波浮の港は古風な幻灯 山の屏風に円い湾 …… 佐藤惣之助 島日和つづきて鳥の渡る頃 清崎敏郎 見送れる島乙女ども青波を へだてる船になほも手を振る 窪田章一郎 |
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快適な島一周道路をまた元町まで帰る。 |