恐山から薬研温泉へ
        下北・津軽半島の旅 1

八戸からバスで北上し、日本三大霊山の恐山、半島の中程の山あいの薬研温泉で一泊、北岸の仏ヶ浦から北端の大間崎と廻る。今朝の予報では晴れだったのに、どんよりと曇って雨が降り出しそうだが。
 
八幡駒。八戸駅で出迎てくれた。南部八戸地方は昔から馬の名産地にちなむ。農村の花嫁が乗る馬の盛装をあらわす。日本三大駒の一つ。と説明板。   車窓から見る畑にはゴボウ畑が特に眼についた。念のため、H20年の野菜統計を見たら靑森は収穫52700tで日本一。この地方は火山灰地の痩せ地だと言うが、適地かな?
 
下北半島では各地で風力発電の塔を見た。H24年4月の統計ではやはり靑森が第一位の330基。しかも下北半島に集中している。なぜ?    陸奥湾。下北半島を横断して、「斧」の柄にあたる横浜町から。津軽半島か、それとも夏泊半島かな?
 
湾を背に、ほたてを両手で捧げ持つ観音様は
「ほたて観音」陸奥湾の美しさと漁業の繁栄などを願って建立された陶器製の観音像。
  「恐山冷水(不老水)」観音様の足下から流れる水を1杯飲めば10年若返ると言われる水。欲張らないでほどほどに飲むのがいいようだ。
 
奪衣婆と懸衣翁像。婆は三途川の渡し賃の六文銭を持たずに来た亡者の衣服を剥ぎ取り、翁が衣領樹に掛けた衣の重さで生前の罪をはかって処遇を決めるとか。薄着がいいのかな?     三途の川。この世とあの世を分ける境目にある川。善人だけが渡れるそうだが悪人はどこへ?
宇曽利湖から津軽海峡に流れ込む唯一の川正津川に架かる。気軽には渡れそうもない橋だ。
曹洞宗恐山菩提寺。高野山、比叡山とともに日本三大霊山。第5代天台座主となる慈覚大師円仁の東北巡錫の際862年に開山したという。蚶満寺、立石寺、瑞巌寺、中尊寺… など円仁ゆかりの寺院は多い。  7月と10月の祭典には多くのイタコが口寄せで死者の言葉を伝える姿が見られるそうだ。口寄せは古くから行われていたと思ったら、昭和30年代に始まったとか、意外に思った。
 
駐車場では 六大地蔵が待ち受ける。    総門。雪深い当山は11月~4月まで閉山する。
 
 地蔵殿までの長い参道の両側にはたくさんの灯籠が並んでいる。硫黄のにおいが漂ってくる。   山門。「霊場恐山」の扁額。左右に仁王像がにらみをきかせる。
 
 本堂(供養の道場)参道の正面ではなく、意外に山門の脇に建つ。大聖釈迦如来像を安置。   長い回廊の奥には宿坊「吉祥閣」がある。立派な施設だそうだ。
 
 薬師の湯(男湯)入山料の500円を払った人は無料で入浴。流れ出る湯に指先だけ浸った。   古滝の湯 。境内に4つの温泉がある。源泉は74.4℃の含鉄・硫黄-ナトリウム-塩化物泉。
 
 地蔵堂。地蔵山を背後に。本尊の延命地蔵菩薩を祀る。    大師堂。開山慈覚大師の徳を譛えるために、弟子が仏像を彫り山中に安置したと伝る。
 
無間地獄。     大王石。あの世の裁判官閻魔大王。
 
 納骨堂。穴から死者の歯を納める。    賭博地獄、金掘地獄、重罪地獄、塩屋地獄…
 
 大町桂月歌標。    亜硫酸ガスでお供えの10円玉も真っ黒に。
 
八角円堂。地蔵立像の周囲一面、故人の名を記した衣類や鞄や菓子や……     賽の河原。石積みが点在。参拝者が積み重ねる。賽の河原地蔵和讃(↓)にならってか。
これはこの世のことならず 死出の山路の裾野なる さいの河原の物語 聞くにつけても哀れなり
二つや三つや四つ五つ 十にも足らぬおさなごが 父恋し母恋し 恋し恋しと泣く声は
この世の声とは事変わり 悲しさ骨身を通すなり
かのみどりごの所作として 河原の石をとり集めこれにて回向の塔を組む 一重組んでは父のため
二重組んでは母のため 三重組んではふるさとの 兄弟我身と回向して 昼は独りで遊べども
日も入り相いのその頃は 地獄の鬼が現れてやれ汝らは何をする 娑婆に残りし父母は……
  積んだ石を鬼が出てきて突き崩す。その時地蔵尊が現れて、裳裾に入れて…。祖母の度々詠じた声を思い出す。   
 
 水子供養納札所。風車が悲しげに回っている。全山至る所に風車が納められている。    地獄から湖岸に出ると極楽。子供を見守る地蔵の傍には「希望の鐘」。かすれた音が響く。
 
宇曽利湖の「極楽浜」。 大尽山がを望む。
湖はpH3.5の酸性湖でウグイだけが生棲息。
  地獄の鬼が現れたら足を引っかけようと結んだ草の輪。子供を助けようとの思い。
 
 地獄で見つけた花一輪。 左は石楠花かな? 右は??   ここでは花を見つけるとほっとする。 
  順路の傍らに無断で納めたという小さな石像や、表札などがたくさん見かけた。この霊地に納めておきさえすれば、そんな思いなんだろう。ここには血の池地獄もあるそうだが、何でもコンクリート製の池で、澄んだ水が湛えているとか。こうなると何とも滑稽にさえ思われてくる。
「恐山は……、うす気味わるさが有難いさにそのままつながるのなら、ここはまさしくその栄光にそむくものではない。あまりに造形的にうまくいきすぎてかえって空々しくなるくらい、来世のイメージが人間の意思で造顕されているのだ。結果のみを観れば多少芝居がかってこっけいだが、そこまで持って行った永年の信仰の蓄積を私は嘲うことができない。」(松永伍一「恐山の女たち」)  
 
半島のほぼ中央部、深い谷間の大畑川の畔に数軒の宿がある薬研温泉。    ホテルニュー薬研。全78室。ここへ来るにもカーブと坂道でスッカリ車酔い。
 
 眺めるのもつらいが、ちょっとだけつまんだ。多分おいしいのだろうなあ。   源泉掛け流し。 アルカリ性単純泉。源泉57℃ ひばの原生林に囲まれた渓流沿い露天風呂。
温泉に身を浸したし、ゆっくりと休んで、明日に備えよう。明日は酔い止めも呑んで。

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