須磨寺から須磨離宮公園へ 須磨を尋ね歩く その2
 

須磨寺は真言宗須磨寺派大本山上野山福祥寺の通称。886年に光孝天皇の勅願寺として聞鏡上人により創建。須磨の市街を南に見下ろす山懐に位置する。
この寺は、熊谷直實に討ち取られた無官の大夫平敦盛ゆかりの寺で、その首塚や敦盛が携えていた高名な「青葉の笛」を所蔵するとか。そうした事から、参拝に訪れる文学者も多く、様々なゆかりの文学者の碑が建てられており、総数は25を超えるらしい。
 
竜華の橋。橋の先には仁王門、源平の庭、宝物館を左にして唐門、そして本堂へ。    仁王門。源三位頼政の再建、仁王力士は運慶及び湛慶の作と伝えられる。
須磨寺の案内図には、竜華の橋の近くに川田順と土田耕平の歌碑が示してあるので探したが見当たらない。たまたま通りかかった須磨寺管長とおぼしき老師に伺うと、耕平と川田順の歌碑は木碑だったので長い年月の間に朽ちてしまった。再建しようとは思っているが、未だその期に至らないと残念そうに語っていた。  
  この寺の桜の落ち葉はらはらと 寂しきときに又来ませ君     川田  順
  須磨寺や竜華の橋を越えくれば 冬小鳥鳴く松の木の間に    土田耕平 
 
  須磨寺有感            陳舜臣
竜華橋畔弔平郎 青葉笛声餘韻長
底事海風吹倒暁 吹残蘭麝断人腸  ……
   須磨寺付近         山本周五郎
須磨は秋であった。
ここが須磨寺だと康子が云った。……
 
 須磨紀行               良寛
すまでらのむかしを問へば山桜  ……
                      正岡子規
暁や白帆過ぎ行く蚊帳の外
 
 源平の庭。
右の熊谷直真が敦盛を扇で呼び返す
   須磨寺にて             蕪村
笛の音に波もよりくる須磨の秋
 
福祥寺本堂。1602年に豊臣秀頼が再建。     「青葉の笛」の詩と曲。右台のボタンで演奏。
 宝物館には国重文の木造十一面観音立像や青葉の笛、敦盛画像、一の谷合戦屏風など2000点 もの無料で公開している。時間に追われて、少しだけ見て回ったが、お目当ての「青葉の笛」は見当たらなかった。どこか違う場所にあるのかな?
 
 平清盛寄進の鼓。   平敦盛卿木像。
 
「弁慶の鐘」一の谷の合戦の際、長刀の先に掛け、前に提灯を吊して陣鐘の代用に鵯越を駆け回ったと。「提灯と釣り鐘」のはじめとか。   青葉の笛の説明板。
弘法大師が在唐時に造り天皇に献上。のち平家に伝わり敦盛が愛玩し陣中にも携えた。
 
 敦盛首塚。「これは武蔵国の住人熊谷の次郎直實出家して蓮生と申す法師にて候、さても敦盛を手に掛けもうししこと、あまりにおん痛はしく候ふほどに、かやうの身となりて候。またこれより一の谷に下り、敦盛のご菩提を弔はばやと思ふ候。……(世阿弥 「敦盛」)    シベリヤ満蒙戦没者慰霊碑。熊の頭を撫でると「今日も暮れゆく異国の丘に…」の 「異国の丘」のメロディーが鳴る。これは気付かなかったが、六地蔵尊の賽の河原の小石を積むと「一つ積んでは父のため二つ積んでは…」と私の祖母も唱えていた和讃が鳴るそうだ。
 
 「敦盛首洗いの池」義経が首実検をする際、この池で敦盛の首を洗ったという。   こんな良い月をひとりで見て寝る 放哉
尾崎放哉はここの大師堂の堂守だった由。 
 
 義経腰掛けの松。敦盛の首をこの松に腰掛けて実検したという巨木。手前は首洗いの池    色づき始めた木立の中に建つ三重の塔。奥の院まで登れば、紅葉も見事だろうなあ。
 
須磨寺やふかぬ笛きく木下闇 ばせを(松尾芭蕉)   月すみて松風すみて須磨の浦  摂津大掾旭叟史 
    廿五日 摂州須磨寺
 須磨寺の松の木の葉の散る庭に飼ふ鹿悲し聲ひそみ鳴く  長塚節 
  須磨寺から500mあまり坂道を登っていくと、「花と水と歴史のオアシス」と掲げる神戸市立須磨離宮公園がある。神戸在住の方がブログで紹介していたので、ちょっと立ち寄ってみた。
入園料400円。ここは西本願寺月見山別邸を買収して「武庫離宮」として完成。戦災で離宮御殿は焼失して神戸市に下賜。今上天皇ご成婚記念事業として須磨離宮公園が完成した由。
丘陵に広がる面積82haの西洋式庭園を中心とする本園と隣接する植物園からなる。 
 
空襲で焼失した総檜造りの武庫離宮。大正・昭和天皇や満州皇帝溥儀も利用したそうだ。     潮見台。離宮建設当時の手摺腰掛。西洋の宮廷庭園技術を取り入れ、城壁を模す。
 
潮見台から。紀淡海峡、紀泉半島、須磨海岸一円を俯瞰、眺望佳絶とあったが、今は?    阿波野青畝句碑            潮見台
須磨涼し 今も昔の 文の如  青畝
 
中門。離宮建築当時のもので、門に続く漆喰壁の塀が続く。    王侯貴族のバラ園の大噴水。少し風が吹くと通路まで水浸し。風を見て走り抜けた。 
王侯貴族のバラ園とは? ここが離宮であったことにちなみ、王侯貴族や芸術家などの名がつけられたバラが植えられ、花と香りを楽しむという。180種4000株が植えられている。花の季節には少し遅いようだったが、何種類かが優美な花を見せて歓迎してくれた。ちょっとPU。  
 
 クイーン・エリザベス。エリザベス女王に捧ぐ    メルヘンケニギン。おとぎ話の女王の意味。
 
 プリンセス・アイコ。敬宮愛子内親王誕生を祝して 捧げる。    ヘンリー・フォンダ。往年の名優。いつまでも色褪せないそうだ。
 
プリンセス・ド・モナコ。モナコ公国王妃グレース・ケリーに捧げた。    レディー・ローズ。大型で多花。
 
 何の像かと思ったら、ドンキホーテとづっこけた痩せ馬のロシナンテ像。なぜここに?   十月桜。植物園へちょっと足を踏み入れたら、桜が密やかに咲いていた。
 
和庭園。 ここでは野点が催されたり、和室は茶会や食事会などに貸し出されている。   画架に向かう人、車椅子で花を楽しむ人、平日のためか、年配の方が多いようだった。
 
白い宮殿をイメージしたレストハウスで昼食。    レストハウスから見下ろす。遠く海が望めた。 
私が歩いたのは六分の一程度かな。もみじ道やあじさい園、牡丹園、椿園、アスレチックや子供の森、児童遊園などなど、大人も子どもものんびりと一日中楽しめるだろう。  

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